対談|生産者と市場と花屋と…花の業界の今を、アルストロメリア農家 片桐さんの話

※こちらの記事は、2020年6月5日に noteに掲載したコラムを再編集したものです。

コロナの影響で、おうち時間の充実のために、花を飾り始めた人が多いと感じる今日この頃。一方で、ニュースではイベントの中止や店舗が閉まって、廃棄される花「ロスフラワー」が問題になっている模様・・・本当のところはどうなんでしょう?

今回は、そんな花業界の今を知るべく、信州片桐花卉園 の 片桐鏡仁さん にお話を伺いました。

「信州片桐花卉園」とは?
長野県は上伊那郡、「二つのアルプスが見える町」飯島町に位置する農園。
この地域ではいち早く、全国でも5番目にアルストロメリアの栽培を始めました。現在は二代目の鏡仁さんが、アルストロメリアを中心に、季節の草花を栽培されています。
全国のフローリストが「片桐さんのアルストロメリア」を指名買いするほど、品種、質共に定評のある産地です。





▲飯島町の風景と、様々な品種のアルストロメリアたち。

正直、コロナの影響はいかがですか?

早速ですが、コロナの影響でご苦労が多かったのではないですか?

4月、5月は正直キツイときもありました。今は、僕のところではある程度落ち着いてきて、徐々に戻ってきているかなっていう状況です。

フラワーショップとのコラボや、直送企画など、片桐さんはかなりアクティブにご活動されていますよね。

生活がかかっているので(笑)
正直、市場はもう少し対策を取って欲しかったですね。
まず3月の、送迎シーズンが落ち込んだでしょう。当然4月、5月も厳しいはずなのに、ほとんど何もアクションが無かったんですよね。
出荷しても、運賃や箱代が赤字になってしまうくらいというか。
大きな市場でも、前年の6割くらいの売上になってしまったみたいですね。

花は育ってくるのに、出荷できない。
出来ても利益が無い。苦しいですね。

そう。結局、業界のマイナスを被るのが生産者になっちゃいますよね。
花屋さんは、仕入れない、っていう選択肢がありますけど、僕らは何年、何ヶ月も前から準備を進めているわけで。
去年の秋くらいから3月くらいにかけて育ててきたもので、4月、5月に売上を作るはずが売れないので・・・アルストロメリアの場合、植えてから数年はそのままの株で花が切れます。ただ冬の温度を下げると、うちの辺りだとピークが4月からになってしまいます。なので冬もしっかり暖房を焚いて、3月からピークがくるようにしています。

じゃあ、もう直販だ!と。

まあ、そうですね。オンライン販売は好評でした。
出せば出すだけ、買っていただけていたので。
逆に、自分達で売っていない生産者さんって大丈夫なのかな!?って心配になりますね。うちはかなり前から、小売向けの商品を強化して取り組んでいるので、まだダメージは少ないです。
特に困っているのは、葬儀やブライダル用の花農家さんじゃないですかね。

1つの品目に特化するって、かなり厳しいと僕は思っています。
露地栽培だけをやっていたとしたら、台風が来たら、それで今年の収入はもうゼロ、みたいな。
うちが少量・多品種・多品目をモットーにやってるのも、リスク分散としてです。天候の変動に対処出来るし、ニーズにも柔軟に対応しやすいです。





▲温室と露地の様子。
 温室は通年で、露地は5月から10月いっぱいまで出荷しています。

最近話題の「ロスフラワー」について

花が売れなくて、「フラワーロス」「ロスフラワー」が問題になっているというニュースもよく見ました。

僕はやっぱり花が好きだし、花を捨てないといけないとすると、精神的にやられるでしょうね。
幸い、産直の企画もありましたし、規格外のものは地元の直売所で売れたりするので3月から今まで、廃棄はゼロでやってきています。

生産者のロスフラワー、花屋のロスフラワー、立場によって捉え方も違いますよね。ドライフラワーにして捨てないでおこう!みたいな取り組みも最近増えてきてますよね。

ドライフラワーは僕、個人的には実はあんまり好きじゃないんですよ(笑)
理由は色々ありますけど、やっぱり生の花が綺麗だと思うから。
適度に処分してもらって、また生の花を飾って欲しいなって思う。



▲農園の朝は早い!片桐さんの所では、毎週月・水・金が収穫日だそう。

今後の花業界と、片桐さんのチャレンジ

最近の花の業界について思うところはありますか?

SNSを通じて花屋さんとの距離が縮まっているな、と感じています。
僕としては、ニーズを直接聞く機会にも繋がるし、良いことだなと思っています。

市場を通さずに、直接花屋さんやお客さんに販売することについては、賛否両論ありますよね。

ただ、生活していくには必要なことだと思っているので。
これからの時代、花を作るだけでやっていくのも厳しいと思っています。
有名生産者さんが廃業したり、知人でも花を辞めて野菜の栽培にシフトしていったり。高齢化が進んでいるので、いつ辞めてもいいと思っている人が多いのが現状です。

今後片桐さんがチャレンジしていきたいことは何でしょうか。

都内でワークショップをしたり、他業種とコラボしたり、やりたいことは多いです。
正直、アルストロメリアってどんな印象の花ですか?

うーん、田舎の庭に咲いていた花、小学生のときに教室に持っていっていた花…

でしょう(笑)
スーパーでパックになっているとか、仏花とか。
僕が「アルストロメリア農家です」って言っても、どんな花だっけ?って。写真を見せて、あー見たことある!みたいな・・・
でも、アルストロメリアは、これだけ色んな色、咲き方があって、しかもそれが1年を通して流通できる。しかも日持ちする。
すごくポテンシャルを秘めた花だと思っているので、イメージを変えて、知名度を上げて行きたいですね。

私も先日送っていただいて、バリエーションにびっくりしました。

花屋さんとの距離が近くなってきたことで、産地見学に来てくれるフローリストさんが増えてきました。現場で実際に花を切って、束ねてもらったりすると、花のプロの人たちがすごく喜んでくれるんですよ。
普段から花に関わっている人たちが、もっと花を好きになってくれる「場」を提供していきたいなとも思っています。


終わりに

今回のインタビューも最後までお読みいただきありがとうございます。
何よりも片桐さんの育てる、美しい「アルストロメリア」を皆さんに知っていただきたい!という思いから、取り扱いを始めました。



突然お声掛けさせていただき、はじめまして、にもかかわらずディープなお話まで聞かせてくださった片桐さんには本当に感謝しています。
ギフトに貰っても嬉しい、楽しい、多様なアルストロメリアの世界。
fanfarmでは催事・イベントでのお取り扱いが中心となりますが、ぜひお手にとってみてください。

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