探訪|千葉県富津市・アンスリウム農園 大佐和花卉園を訪ねて

こんにちは。fanfarmディレクターの太田です。今回も産地探訪のレポートをお届けします。

ブルームネットさんへの訪問の翌々日、再び千葉は南房総の、富津市にやって来ました。

前回の記事はこちら→

今回お伺いするのは、アンスリウムの栽培で著名な「大佐和花卉園」さん。

大佐和花卉園|おおさわかきえん とは
千葉県富津市の、アンスリウムの切り花専門農園です。
アンスリウムはすぐには育たない花。
焦らずのんびり、じっくり向き合いながら栽培を続けています。

fanfarmでお花を扱わせていただけませんか?と電話でお話したきりで、お会いするのは初めてでしたが、いろいろな率直な質問にも、穏やかに、丁寧に答えていただきました。
早速紹介していきます!

焦ってはいけない花、アンスリウム

アンスリウムの栽培は、オランダから苗を輸入するところから始まります。
入荷したばかりの苗の大きさはおよそ10~15cmほど。
半年から1年は苗を育て、2年目くらいから採花できるようになります。
花が出荷できるのは、その後3年から5年の間です。

大佐和花卉園では、ツボミが出てから、出荷するまで、2ヶ月育て続けます。
これは、輸入のアンスリウムの2倍の期間です。
十分に育て切ることで、花や茎にハリや硬さが出て、しっかりとした作りになります。

1つの株から、どのくらいの花が切れるか知っていますか?
なんと、年間で、平均して4~5本なんです!
欲張ってたくさん花を咲かせて切ってしまうと、品質が落ちてしまうそう。
光量などの環境を整えることで、咲きすぎないような調整を行っています。



出荷前日に採花し、しっかり水揚げを行います。
これをすることで、輸送中や、飾っている間の水下がりがなく、私たちの手元に届いたときの管理がとっても楽になります。



大佐和花卉園のアンスリウムの中心の花序(棒のような部分)は、力強く、太さもあり、思い思いの方向に伸びています。

花(苞)のねじれ具合や、花序の方向性は、同じ品種、同じ株でもその時々によって違います。
これが自然の姿に近い状態です。

上向きの花序はかさばるので、大きくて厚みのある箱が必要となり、輸送コストが上がることもありますが、自然の自由な姿を生かして仕立てるというのが、平野さんの譲れないこだわりのひとつ。
一輪ずつクセが違う箱詰め作業にも実は手間がかかっていて、技がいると平野さんの奥さまが教えてくれました。

どんどん育てない、無理に箱に詰めない。
納得できるクオリティで届けるために、焦りと無理は禁物の花というわけです。

アンスリウムのトレンド事情。

アンスリウムといえば、花屋でよく見かけるのは赤、緑。
手のひらより一回り大きいくらいの、インパクトがあって個性的な品種がかつての主流でした。

最近は赤でも、レンガ色というか、チョコレート色というか、黒味がかかった赤が人気。
花序の色も、白や黄色というよりは花色の邪魔にならない、同色系がヒットしています。

緑もこれまでの色味と違っていたり、オレンジや紫など、ニュアンス系のヨーロッパ風のテイストがトレンド。

あえて受粉させて育てつづけることで、アンティーク調の色に整えてから出荷している品種もあります。

ちなみに、グリーンのグラデーションがかかるのは株の調子が特に良いときだけなんだそう。
同じ品種でも、どんな発色の花に出会えるかは、そのタイミングごとのお楽しみです。



平野さんは、アンスリウムの葉も出荷しています。
葉の色は、始めは茶色っぽい色で、成長するにしたがって緑が濃くなっていきます。



収穫した葉は、表面の汚れを飛ばしたあとに、手で1枚ずつ丁寧に磨きます。
花に負けず劣らず、長持ちしてくれるのが魅力です。

言いなりにはならない。プッシュ型の提案をしていきたい

アンスリウムはアレンジメントで使われることも多く、丈が短く、小ぶりなサイズ感のものも出回っています。
フォルムは、ハート型の可愛らしいものから、スッと流れるようなシャープなものまでバリエーション豊か。
このトレンドは、実は最近のことだそうです。
平野さんは、10年前くらいからこうした品種の栽培を始めましたが、最初は見向きもされませんでした。

10年も前から、独自の栽培を行っていたのは、アンスリウムが「焦ってはいけない花」だから。
つまり安定して流通できるようになるまでにとても時間がかかる花だからです。

市場や花屋さんから、今これが欲しい!という声をもらうそうですが、すぐには作れない。
だからこそ、要望をそのまま取り入れるのではなく、平野さん自身が魅力を感じる品種や形を発信し、提案していくスタイル徹底しています。

ちなみに、これからは中くらいのサイズ感で、丸っこいフォルムのものを打ち出していきたいとのこと。
数年後に、この記事を読み返したときに、トレンドになっている可能性大です。

手をかけて育てられた大佐和花卉園さんのアンスリウムは、暑い季節の強い味方です。
ぜひお取り寄せいただき、どんな顔の子たちが届くのか、楽しみにお待ちください!

writer:太田

大佐和花卉園のページをみる→